『クリスマス・キャロル』(A Christmas Carol, 1843)

主な登場人物

エベニーザ・スクルージ (Ebenezer Scrooge)

冷酷で非人間的な初老の守銭奴。

ファン (Fan)

スクルージの妹であり、フレッドの母親でもある、若くして他界した女性。

フレッド (Fred)

スクルージの甥で明るく善意にあふれた人物。

ジェイコブ・マーレイの幽霊 (Ghost of Jacob Marley)

生前スクルージと共同で事務所を営んでいた人物で、あるクリスマス・イヴの夜、スクルージの眼前に出現して、生きる姿勢を改めるように諭す。

過去のクリスマスの幽霊 (Ghost of Christmas Past)

スクルージに少年期から青年期に掛けての過去のクリスマスをめぐる場面を見せる幽霊。

現在のクリスマスの幽霊 (Ghost of Christmas Present)

スクルージに孤独な彼のクリスマスとは対照的な現在のクリスマスの場面を見せる親切で寛大な霊。

未来のクリスマスの幽霊 (Ghost of Christmas Yet To Come)

改心しなければ辿ることになる暗く悲惨な未来のクリスマスの場面をスクルージに見せる無言の厳かな幽霊。

ベル (Belle)

スクルージの婚約者であった女性。

ボブ・クラチット (Bob Cratchit)

スクルージの事務所で働いている小柄で家族思いの事務員。

ティム・クラチット(タイニイ・ティム)(Tim Cratchit; Tiny Tim)

下半身が不自由で松葉杖に頼るボブ・クラチットの末の息子。

作品の梗概

主人公はエベニーザ・スクルージという初老の高利貸し。唯一の肉親である甥フレッドのクリスマス・ディナーの誘いを拒絶して、クリスマス・イヴを迎えても金銭の勘定だけに没頭する彼の眼前に、かつての相棒で、7年前のクリスマス・イヴの夜に死去したジェイコブ・マーレイの幽霊が出現して、心を改めるように諭すとともに、三人の幽霊が三日三晩に渡って出現すると告げる。

第一の幽霊、即ち過去のクリスマスの幽霊は、家庭の中で妹のファンとだけしか心が通い合わない孤独な少年時代の姿をスクルージに見せ、ついで拝金主義に取り付かれた青年スクルージの姿を見せる。かつての心やさしい青年からはあまりの変貌した姿に絶望した婚約者ベルは別れを告げて去ってゆく。

第二の幽霊、即ち現在のクリスマスの幽霊は、スクルージの事務員ボブ・クラチットとフレッドが、それぞれ裕福ではないが、心の底からクリスマスを祝い楽しんでいる家庭風景を、スクルージに見せる。

 第三の幽霊、即ち未来のクリスマスの幽霊は、近所のすべての人から嫌われ見捨てられた人の、惨めな死の姿をスクルージに見せる。やがて無縁墓地に埋葬されたその男の荒れ果てた墓を見せる。墓碑銘はスクルージと書いてあった。びっくりした彼は、自分は今から全面的に悔い改めると大声で叫び、神の慈悲にすがる。その直後に目が覚めたスクルージは全てが一夜の夢であった事実を認識して狂喜するとともに、その日がクリスマスであることを知り、クラチット家の足の不自由なティム坊には第二の父親となり、全ての人々にやさしく振る舞う人間として、新しい出立をする。