ペンギン版の編者の Michael Slater による注釈は、"nuts to (a person)" を 「嬉しいもの」(OED 5.a. A source if pleasure or delight to one. Now slang.) としている。 更に敷衍するならば、ディケンズはここで、 他人の幸福を見て感じる慈愛の快楽のみならず、他人の苦痛を見て感じる悪意の快楽(毀傷の喜び [Schadenfreude])をも含めている点で、自利的な個人 主義的倫理に根ざしたジェレミー・ベンサム (Jeremy Bentham, 1748-1832) の機械的快楽主義を念頭に置いていたように思えてならない。 そのような読みをすれば、"the knowing ones" の訳語としては「学者先生」の方がよい。