監獄
ロンドンの監獄としては、チャールズ・
ディケンズの小説などにも頻繁に登場する債
務者監獄,債務者拘留所、懲治監、矯正院、
未決監など,さまざまな種類のものがある.
しかし、18世紀の終わりころまでは,監獄と
いえば大方はいわゆる「一般監獄」を意味し、
債務者、すり、強盗、にせ金造り、おいは
ぎ、密猟犯、浮浪者、殺人犯、売春婦など、
あらゆる犯罪者が男女年齢の区別なくいっ
しょくたに入れられていた。
マーシャルシー(負債者)監獄
マーシャルシーとは「宮内司法官の座」(マー
シャル・シート)からできた名称で、この監獄
がもともと王室の執事や宮内司法官が判事と
なって開かれた法廷に属していたことを表わ
している。設立された年代は不明だが、エド
ワード三世時代の1381年に起こった、ワッ
ト・タイラーの率いる農民一揆によって破壊された。
このときの
マーシャルシー監獄は、チャールズ・ディケンズ
の『リトル・ドリット』で有名になったマー
シャルシー監獄よりも少し北の方、現在の
マーメード・コートとキング・ストリートの問に
あった。
18世紀の終わりころに、この監獄は同じバ
ラ・ハイ・ストリートの少し南寄り、セント・
ジョージ教会のすぐ北側へ移された。1824年
2月、ディケンズの父親ジョン・ディケンズが
負債のために逮捕され,約3か月問ここに収
監された。マーシャルシー監獄は、その後
1842年に閉鎖されたが、1855年12月から57年
6月にかけて月刊分冊で刊行されたディケン
ズの『リトル・ドリット』によって,不朽の名
を後世に残すことになった。わずかに往時の
名残りをとどめる高い塀に、「故チャールズ・
ディケンズの名作『リトル・ドリット』で有名
になったマーシャルシー監獄の跡地」という銘
板がはめこまれている。
『ロンドン事典』(大修館書店)
Dickens' London - The Marshalsea